下山静香

スペインの心を弾く!
 アルベニス・ピアノ名曲集

没後100年&生誕150年記念(2010年)

 

 

   繊細な音色と抜群のリズム感に定評ある下山静香が、このアルバムでスポットをあてたのは、今年没後100年、来年(2010年)生誕150年を迎えるスペインの代表的作曲家アルベニス。

 

カタルーニャに生まれ、アンダルシアを愛し、故国を熱く思いながらパリに没したアルベニスのピアノ作品の真髄を、裸足のピアニスト下山静香が、万感の熱い想いを込めて奏でています。

 

収録した<檜チャリティー・コンサートホール>は湯河原の緑の丘陵に位置し、アルベニスが愛したアンダルシアの海岸をも思わせるその眺めはまさに絶景。文字通り総檜づくりのホールと、下山の弾くスタインウェイが織りなす響きは、深く、熱く、時には波のようにうねり、風が吹き抜けます。

 

下山静香さんが弾くピアノには独特の風土感があり、スペイン的な色彩と輝きに満ちている。それは、スペインという土地の風土と人情を知らずには、決して身につかぬ感性である。(逢坂 剛/作家)(ライナーノーツより)

 


  スペインの心を弾く~アルベニス・ピアノ名曲集

       アルベニス

    1. 旅の思い出 op.71

   海にて(舟歌), 伝説(舟歌), 朝の歌, アルハンブラにて, 大地の門(ボレロ), 入り江のざ

   わめき(マラゲーニャ), 浜辺にて

  2.グラナダ

      スペイン組曲 Op.47 より

       2つのスペイン舞曲 Op.164 ホタ・アラゴネーサ、タンゴ イ短調

  3.タンゴ ニ長調

    4. エスパーニャ、6つのアルバムリーフより

  5. プレルーディオ(前奏曲)

  6. セギディーリャス「スペインの歌」Op.232より

■下山静香(ピアノ)

   CD: MF22803   定価2,600(税込)

   録音:檜チャリティ-・コンサートホール(神奈川県湯河原)

            20091019日‐21 

   発売日:20101

             Special thanks to Kichijyouin Yugawara



■ドビュッシー「12のエチュード」について

 「12のエチュード」は、ドビュッシー最晩年の傑作のひとつです。1914年に第1次世界大戦が勃発、そのショックに追い打ちをかけるように、翌19153月には最愛の母と、妻のエンマの母親を相次いで亡くし、ドビュッシーは自身の病気も重なって作曲に手が付けられる状態ではありませんでした。しかし、7月に大西洋岸のプルーヴィルに保養のために移ったのと、デュラン社からショパンのエチュードなどのフランス版の校訂を依頼されたのがきっかけで創作意欲を取り戻し、2台のピアノのための「白と黒で」、3つのソナタ、そして「12のエチュード」を次々に発表しました。「12のエチュード」がショパンに献呈されたのは、こうしたドビュッシーの当時の状況が背景にあると考えられています。

 12のエチュードは6曲ずつの2巻に分けられています。「5指のための、チェルニー氏にならって」、「3度のための」、「4度のための」、「6度のための」、「8度のための」、「8指のための」と名付けられた第1巻の6曲は、それぞれ指の訓練がめざされていますが、すでに第1曲でチェルニーが皮肉られているように、19世紀の楽天的な名技主義は退けられ、新しいピアニズムの確立がめざされています。ただしその背後には、4度や6度の平行進行の偏愛による、中世的な音響像の回想がある点も興味深いところです。

 第2巻の6曲はそれぞれ、「半音階のための」、 「装飾音のための」、「反復音のための」、「対比させられる響きのための」、「組み合わされたアルペッジョのための」、「和音のための」と名付けられ、ドビュッシーならではの微妙な陰影を伴った高度な音響表現の実現がめざされています。このエチュードが、単なる技術の鍛練の水準をはるかに超え、高度な芸術性を要求し、みごとな演奏効果を生むゆえんがそこにはあります。

ショパン〜ノアンの思い出
 こぼれるようなロマンとドラマディックな抒情

 ショパン:ソナタ第3番、3つのマズルカOp.59

 

 

マイ・フェイバリッツ・モーツァルト

PERLA/下山静香

 

   下山静香は桐朋学園で学んだピアニストですが、パリ国立高等音楽院の教授を退官後に来日し、晩年を日本の音楽教育に捧げた故アンリエット・ピュイグ・ロジェ女史や、彼女の高弟である藤井一興氏などからも薫陶を受け、さらにヨーロッパに渡って、特にスペインに長期間滞在して研鑽を積み、演奏経験を重ねるなかで、響きに対する感性も磨いていきました。

   ピアノは、モーツァルトの時代以降に改良が重ねられ、大音量が出るようになりました。ピアノ本体が響板を備えているので、デッドな空間でも良く鳴りますし、ペダルによって音を保ち、倍音を豊かに響かせることもできます。しかし、ここにピアノ演奏と録音にとって大きな問題が潜んでいると言えます。

   このディスクには下山静香が特に愛するモーツァルトの作品が収録されていますが、4曲のうち、2曲目のソナタK.281 と最後のロンドk.551は、モーツァルトが終生愛用したクラヴィコードを前提として作曲されています。クラヴィコードは構造上、音量は出ないが、良く響く空間と一体となると、絶妙なニュアンスを生み出すことができます。

   下山静香はこの録音のために、三鷹のホールで何度もリハーサルを重ね、このホールの響きを十分に体得した上でモーツァルトの録音に臨みました。美しい響きや、細やかな表情が随所に聴かれ、モーツァルトの深淵に迫ることができたのではないかと思われます。

■「下山静香さんのモーツァルト」(海老澤 敏)

 モーツァルトはむずかしい。とりわけ彼のピアノ曲はどうしようもなくむずかしい。これが、この不世出の天才音楽家の研究や評論にすでに半世紀を越える歳月を費やして来た私自身の偽らざる日ごろの感懐である。

とりわけピアノ曲が、と書いたのは、二世紀以上もの隔たりのあるモーツァルト時代の、彼が使ったピアノフォルテと今日のピアノの大きな相違が、そして演奏法の違いが、現代のピアニストたちの躓きの石だからだ。それにモーツァルト自身の表現意図は謎に包まれていて解読しがたい。

 

 下山静香さんのモーツァルト新譜を聴いて、ソナタでも、またロンドでも、そうした挫折の障害がしなやかに避けられ、私たちに作曲者が望み、後世に託した秘密を解き明かす鍵が差し出されているのが、心楽しく感じ取られたのを告白しておこう。


   PERLA

   モーツァルト

   ピアノ・ソナタ第12番 へ長調 K.332

   ピアノ・ソナタ第3番 変ロ長調 K.281

   ロンド ニ長調 K.485

   ロンド イ短調 K.511

   下山静香(ピアノ)

■CD:MF22802   定価2,600(税込)

   発売日:2007年7月

   録音:2007125-26日 三鷹市芸術文化センター「風のホール」

   ライナーノーツ   「下山静香さんのモーツァルト」 海老沢 敏

  「仙台の森で聴いたモーツァルト」川良浩和(元NHKスペシャル・プロデューサー)

  「モーツァルトの謎」西脇義訓