デア・リング東京オケ、初公演 耳を使って合わせる響き
団員が下を向いて演奏 毎日新聞 2018-6-18

https://mainichi.jp/articles/20180618/dデア・リング東京オケ、初公演 耳を使って合わせる響き 団員が客席を向いて演奏

画期的なオーケストラが初めてのコンサートを行う。「デア・リング東京オーケストラ」。誰もが、団員の並び方に驚くだろう。通常、オーケストラは指揮者に向かって座るが、ここでは全員、客席のほうへ向かって座る。また、弦楽四重奏団のように4人ずつのグループとして座ることもある。伝統的に踏襲されてきたオーケストラ編成に一石を投じている。

 デア・リング東京オーケストラを設立したCD制作者の西脇義訓は「ワーグナーのバイロイト祝祭劇場で体験した音など、素晴らしい響きを通常のオーケストラで実現するためにはどうしたらいいか追求した結果」と言う。名前の由来もワーグナーの《リング》(ニーベルングの指環)にある。

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 このような編成では指揮者を見ることのできない団員も生じる。弦楽器の弓の上げ下げもそろわない。だが、自ら指揮する西脇は「全員が自由に弾いてほしい」と言う。

 「本当は団員がどちらを向いていてもいい。重要なのは、アンサンブルを行うときに、隣を見たり、アイコンタクトによって合わせたりしないこと。前を向くのはその象徴として行っている。指揮者の棒に合わせるのではなく、団員同士が互いに耳で聴き合うことが大切。それによって自発性も生まれる。指揮の運動で合わせる響きと、耳を使って合わせる響きでは根本的に違う。このような編成にすると、視覚はほとんど使わず、意識を常に空間の遠くに置いて、オーケストラの端から端まで団員全員がオーケストラ全体の音を聴けるようになる」と狙いを語る。

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 それらの方法は「コルボ(スイスの名指揮者)の下振り(練習指揮)などの経験によって確信した」ものだ。気鋭の若手からベテランまでが集まるオーケストラ団員も、初めは戸惑っていたが、試行して誰もが驚くほど響きが変わり、今では「自由に弾けることで音楽が生まれる」と喜ぶようになった。

 実はデア・リング東京オーケストラのCDはすでに5枚リリースされている。たとえば第1弾のブルックナー《交響曲第3番「ワグネル」》を聴くと、空間に広がる響きの深さ、純粋さが音楽に真摯(しんし)な説得力を生んでいて、感銘を覚える。それらを聴いた音楽評論家、オーディオ評論家、CD購入者から「ぜひコンサートを聴きたい」と切望する声が高まり、結成5年にして初の公開コンサートが行われることになった。

 コンサートは8月31日午後4時から東京・三鷹市芸術文化センター「風のホール」で。曲目はメンデルスゾーン《交響曲第4番 イタリア》、ベートーベン《交響曲第7番》ほか。当日のライブ録音はCD化もされる。問い合わせは03・6804・6526。【梅津時比古】de/018/040/017000c