青木十良 Cello

 

 3タイトル(発売順)

米寿記念 名器スカランペラが奏でる稀有の輝き!
 80歳を過ぎてバッハがようやくわかってきたんです。

青木十良/無伴奏チェロ組曲第6番
終わりのない旅~心伝者

頂上が見えない神秘の高峰、過去にその稜線にたどり着いたと思われる天才や巨匠達はいるものの、誰一人としてその頂きを極めたとされる人間はいない。そんな天の彼方の頂きを目指し、人が用意してくれた道路やケーブルカー、果ては登山道さえも頼らずに、自らの2本の脚を頼りに藪をかき分け岩を乗り越え登ってきた、そして、今もなお登りつづけている一人の男。

 バッハの無伴奏チェロ組曲。チェリストにとってはあたかも6つの高峰を連ねる大山脈。86歳(CD録音時)の「青年」青木十良の姿がはるかその高嶺にある。それも、その連峰の中でひときわ大きくそそり立つ「第6番」に。

 眩いばかりの陽の光が、さながらプリズムを通したかのような何種類もの原色を織り成して虹のシャワーのように降り注ぐ。それは、耳や脳だけではなく、衣服を徹し全身の肌に心地よい刺激を浴びせかける。しかし、何というとてつもないエネルギーだ。このような、輝いて輝いて、そしてまた輝いているバッハの演奏に出会ったことが果たしてあっただろうか。

 ー中略

 青木十良という心伝者がひとたび愛器スカランペラ(1912)を奏でるとき、もう演じてはいない、音を作ってはいない。ただ、心を、魂をデフォルメしているのだ。

終わりのない旅を続けられる人は幸せである。【北村貞幸(ライナーノーツより)】

青木十良/バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番

チェロ:青木十良

 

CD NF20301 希望価格:2,600(税込) 

発売日:2003年11月

録音:2000年8月25日~28日 旧後藤美術館(千葉)

使用楽器:Stefano Scarampella di Brescia 1912

収録時:85歳

「研究するなら逆行するのがいい、2番なんか洗練された技術を要求しています。6番を選んだのは音域が広ございますね。それは技術的な楽しみもあるんですよ。なぜ6番から始めたかというと、一番明るいですもんね。」

 

「バロックの時代は声部がどんどん増えていって、ひどいのは13声とか、出てきた音楽は結局筆洗の中の色のように、どの音楽も全部ネズミ色になっちゃったんで、バッハが一からやり直したようですね。原色に戻って。一つの楽器で実験してるんじゃないかという気もする。」

 

「若い時の感激のあの音をどうにかして聞かせたい。私は一番に音楽なんです、音楽の内容、そしてやっぱり音色なんですよね。」

 

「こんなもの録音しようなんて苦労なもんですけど、でもいい研究になりましたよ。えらい勉強させられました。85歳を過ぎてこんな勉強するとは思わなかった。まだやりますよ、耳が聞こえるうちはやろうと思ってます。」

 

「80歳を超えて、バッハがわかってきた。研究するなら逆行するのがいい。6番を選んだのは音域が広ございますね。それは技術的な楽しみもあるんですよ。」「いろんなものに脚を突っ込むから面白いですよ僕は、音楽はそういうものの総合じゃないかな。」

 

シュタフォンハーゲン弦楽四重奏団の写真の説明。

ウォルフガング・シュタフォンハーゲン、鳩山寛、青木十良、北爪規世による弦楽四重奏団。

青木を含め、シュタフォンハーゲンから実地にアンサンブルを学んだ、かけがえのない体験であった。

(青木十良40代前半)

 

翁(おきな)にして童(わらべ)
 心を打つ! 青木十良90歳のバッハ

■心を打つ! 青木十良90歳のバッハ。

こんなチェリストが日本にいたとは! 

 驚きと深い感動をもたらしたバッハの<無伴奏チェロ組曲第6番>から、5年半の歳月を経て録音された<第5番>のCD作品がリリースされる。

「80歳を越してようやくバッハがわかってきた。研究するなら逆行するのがいい」と、夢中で始めたバッハの研究と録音。

「弦楽器は音で参っちゃったです。感激したのはシゲティのベートーヴェン・アーベント」

 化学を志していた15歳の青木少年が、弦楽器の音に目覚めた瞬間である。「若い時の感激のあの音をどうにかして出したい。私は一番に音楽なんです、音楽の内容、そしてやっぱり音色なんです」

 満90歳となった今も、楽譜の研究と稽古に日々いそしみ、新たな発見に心躍らせる。

 第5番もバッハの自筆譜は残っていない。今回も楽譜の研究は録音ぎりぎりまで行われた。ありとあらゆる版を参照し、さまざまなボウイングを試みた結果、J・Sバッハの2番目の妻である<アンナ・マグダレーナ・バッハ>の筆写譜に基本的には戻った。

 一見不自然に思えるスラーなどもあるが、そこにバッハ自身の強い意志を感じたからだ。 

弦楽器は、演奏空間と一体となってこそ本来の響きとなる、というのが青木の持論であり、録音会場にも徹底的にこだわる。今回は響きの美しさで定評のある浜離宮朝日ホールを録音会場に選び、3日間のセッションでたっぷりと時間をかけて録音した。

 青木十良はバッハの譜面を、長い長い年月をかけて奥の奥まで穴があくほど読み込んだ。その結果現れる演奏は、最先端のバロック奏法とは必ずしも一致はしないかもれないが、力みのない弓のスピード感からくる<ガヴォット>や<ジーグ>などでの躍動感は尋常ではない。

一転、<サラバンド>や「鳥の歌」では、伸びやかな歌が美しく紡がれていく。 ホールは響ききっている。

     おきな    わらべ

   翁にして童

 バッハ:無伴奏第5番+鳥の歌(カザルス編)

  P.カザルス(1876-1973)編:鳥の歌(カタロニア民謡)*

   青木十良(チェロ)/ピアノ:水野紀子*

   CD: NF20302 希望価格:2,600(税込) 

   発売日:2006年6月20日

    録音:2006年3月6日~8日 浜離宮朝日ホール

   使用楽器:Stefano Scarampella di Brescia 1912

 収録時:90

■翁(おきな)にして童(わらべ)ー。

 青木十良の今を語るのに、鎌田東二の説く「翁童」ほど的確な言葉はないように思える。二つの存在に共通する無垢性こそ、90歳を超えてなお瑞々しい青木の音楽の核心だ。

 数年前、バッハの無伴奏第6番のCD(NF20301)を聴いた時、85歳という年齢が俄に信じられなかった。「老いた音楽家ゆえの枯淡の境地」とよく言うが、艶やかに脈打つフレージングなど、その演奏には枯れたところなど微塵も感じられなかった。

 鋳型にはまった日本の音楽教育に染まらずノビノビ育った青春時代。その後、科学への興味から音響を仕事にしたこともある。斎藤秀雄に請われて桐朋学園で教えながらも、システマティックな斎藤メソッドとは一線を画した柔らかな発想で後進を指導した。青木の音楽人生を貫くのは自由の精神だ。

 6番から始まった無伴奏組曲を1番まで遡って録音するという。「翁童」の、生の始原へと向かう遍歴を見守りたい。【上坂 樹(コンサート・チラシより)】

 

エレガンス=自尊

 心を打つ! 青木十良90歳のバッハ

チェロ人生で最後にたどりついたのが、エレガンス=自尊なんです!

80歳を越してようやくバッハがわかってきた。研究するなら逆行するのがいい」と、夢中で始めたバッハの研究と録音。第6番から逆行し、10年を経てようやく4番まで辿りついた。

「弦楽器は音で参っちゃったです。感激したのはシゲティのベートーヴェン・アーベント」

原子物理学を志していた15歳の青木少年が、弦楽器の音に目覚めた瞬間である。

「シゲティのようにシュワッと弾けるシャンペンのような音が出したい」と、音色には特にこだわって研鑚に励んできた。さらに、弦楽器は、演奏空間と一体となってこそ本来の響きとなる、というのが青木の持論。ホールの響き、特に残響には徹底的にこだわって録音会場も厳選してきた。

三作目となる第4番は、2000人収容の所沢のミューズ アークホールで収録した。一作目の第6番は東京近郊の教会のようによく響く旧後藤美術館、つづく5番は525人収容で室内楽ホールとして響きに定評のある浜離宮朝日ホールでの収録だったので、収録会場はだんだん大きくなった。

「4番は山に譬えれば谷川岳。アルプスの高峰を制した名登山家でさえ、常に滑落の危険に晒される魔の山。弾き手の対応力と創意工夫が試されます。一見、無機質のようで、噛めば噛むほど味が出る作品なんです」と4番についても研究をとことん重ねてから録音に臨んだ。

エクストラ・トラックには、J.S.バッハのミュゼットを入れた。78回転のSP盤からの復刻で収録は1955年。青木十良というとチェロ、あるいは室内楽などのアンサンブルの指導者として現在は名が通っているが、この演奏から終戦の直前にNHKに嘱託として採用され、毎週のように生演奏で放送をつづけ、初演も数多くしてきた生粋のソリストであることがうかがい知れる。このSP収録の前年1954年には、ピエール・フルニエが初来日し滞在のホテルで演奏を聴いてもらっている。右手を押し込むボウイングが周囲には多かったが、「あなたのボウイングで良い」と言われ自信をもったという。

もう一曲ショパンのソナタの第1楽章をエクストラ・トラックの2曲目として入れたのは、ともすればチェロがピアノに埋もれがちなこの作品において、ピアノとの絶妙のバランスと両者に共通する目映いばかりの音色をお聞きいただければとの思いからである。

青木十良は良く弟子たちに警告を発している。「音楽は演奏する人間をさらけ出す。技術ばかり磨くと悲劇が起こる。もっと自分自身を磨きなさい」と。

そして青木十良がチェロ人生で最後にたどりついたのが、エレガンス=自尊である。青木十良は7月12日に満96歳を迎えるが、CDと同時に著作「チェリスト、青木十良」(大原哲夫著、飛鳥新社刊)が出版された。また、ドキュメンタリー映画も制作された

Elegance

 バッハ|無伴奏チェロ組曲第4番

   EXTRA TRACKS

 ⒈ J.S.バッハ|ミュゼット( ガボット〜SPより復刻 1955年録音

   ⒉ ショパン|チェロ・ソナタより第一楽章

                      (2006年6月、浜離宮朝日ホールで収録)

 青木十良(チェロ) 

 竹尾(鳥井)耹子、ピアノ(ミュゼット)、水野紀子、ピアノ(ショパン)

 CD: NF20303 希望価格:2,600(税込) 

 発売日:2011年7月12日発売

 収録時93歳 

 録音:2009年4月22日~24日  所沢市民文化センターミューズ アークホール

 使用楽器:Stefano Scarampella di Brescia 1912

 ライナーノーツ

 名登山家さえ悩ます「魔の山」/上坂 樹、バッハの贈り物~新たなる福音/北村貞幸

 

エレガンス=自尊

音楽の仕事、芸術の仕事をしながら、自分が何を求めているんだろうと、ずっと考えてきているわけです。

それが「エレガンス」なんだと、つい最近やっと発見したことに、自分でも驚いているんです。そう、「エレガンス」に向かって、自分はやってきたと思います。

「エレガンス」といっても、単にオシャレとかというものではないんです。

「エレガンス」の根底にあるのは自尊です。

音が少々狂っても自尊というものは、ガタンと落ちます。

メロディーの線の具合がちょっとうまくいかなくっても、同じように自分の心が崩れますしね。

「エレガンス」の原語本来の意味には、自尊ということが入っていると思います。

日本語の「品格」にも通じると思います。

自分を信じ、他の人を尊ぶ。

それが全身にみなぎって表現できたときには、100パーセントよい音楽をやったと思いますね。

 

激動の時代を生き、バッハの名録音を残した

ひとりのチェリストの物語。 

著者:大原哲夫 定価:2200円(税込)

飛鳥新社刊、四六上製 328ページ

青木十良(あおきじゅうろう)、

96歳、音楽に己を問う。

激動の時代を生き、

バッハの名録音を残した

ひとりのチェリストの物語。(帯より)

■無伴奏第6番、5番についても、本文で大きく取り上げられています。